No. 283: April 14th, 2016 (Thu) 15:30 - 16:30

Speaker: 山口正輝 (東京大学天文学教育研究センター (4月から))

Title: 位置天文観測による、長周期系外惑星および星質量ブラックホールの探査

Abstract: 位置天文観測衛星Gaiaを用いて、どのような系外惑星が見つかるか、またどのような星質量ブラックホールが見つかるかを検討した。

 まず、Gaiaを用いた惑星探査についてであるが、過去に複数のグループによって検討され、万単位の惑星系が新たに見つかると期待されている(Casertano+08, Perryman+ 14)。しかし、Gaiaミッション期間である5年を超える長周期の惑星に対しては、検出条件を含め詳細な検討がなされていない。このような長周期惑星は 直接観測が可能であるため、地球からどの程度の距離でどのような中心星の惑星系が見つかるかという情報は観測戦略上重要である。したがって、 本研究では幾何学的な検出条件を与え解析的に探査可能惑星について調べた。その結果、10倍の木星質量程度の惑星であれば数日から200年程 度の周期でM型星(地球から10pcの距離)周りを回るものが見つかることが分かった。

 次にGaiaを用いたブラックホール探査についてであるが、これまで1万個程度 のブラックホール連星系がGaiaで検出可能であることがわ かっている(川中氏学会発表)。この数は、これまで見つかっているブラックホールX線連星系の数(~50個)を遥かに凌ぐものである。しか し、この検討はブラックホールと連星系を組む伴星(主系列星または巨星)のうちGaiaで測光観測可能な星の数を数えたものであり、位置天文 観測でブラックホールを同定できる数ではない。本研究では位置天文観測でどのような周期のブラックホール連星が検出可能かを見積もった。その結果、5太陽質量のブラックホールであれば数日から100年程度の周期の連星系が見つかることがわかった。これを元に、Gaiaで同定できる ブラックホール連星系の数を見積もることができる。

No. 284: June 2nd, 2016 (Thu) 15:30 - 16:30

Speaker: 下条圭美 (国立天文台チリ観測所)

Title: ALMAで探る太陽大気

Abstract:

太陽は最も近い星であるにもかかわらず、基本的な問題が未だ解明されていない。問題を列挙すると、黒点の周期的増減を説明する「太陽ダイナモ問題」、六千度の光球上に一万度と百万度の大気を作る「彩層・コロナ加熱問題」、太陽圏全体に影響を及ぼす爆発現象である「太陽フレアの予測および粒子加速問題」である。これらの問題の根本は、天体における磁場の生成・移送・消散の理解であり、太陽だけでなく他天体を理解する上でも重要である。これらの問題の解決のため、様々な波長や手法による観測や理論的研究が行われてきている。  この4月末に締め切られたALMA Cycle4から、太陽の観測提案が受け付けられるようになった。ALMAにとって初めての太陽観測の共同利用公募であり、ALMAの機能がすべて太陽観測にて利用できるわけではないが、世界中から多くの太陽観測提案が寄せられた。  本セミナーでは上記の太陽物理での大問題をレビューし、試験観測のデータを基にALMAによりこれらの問題解決にどのように寄与できるのかを議論する。

No. 285: June 23th, 2016 (Thu) 15:30 - 16:30

Speaker: 前澤裕之 (大阪府立大学)

Title: SPART望遠鏡の紹介と、他測器による最近の太陽系惑星観測の動向

Abstract:

近年、系外惑星の探査研究が目覚しい。初期のM-G型星の活動は活発だったという議論もあり、中心星が周囲の惑星の中層大気の物理・化学的環境、ハビタブルゾーンに与える影響について、より詳しい理解が急務となってきている。そこで、我々はまずG型星である太陽の現在の活動が地球型惑星の中層大気にどのような影響を与えているか理解を深めるべく、国立天文台野辺山宇宙電波観測所の口径10 mのミリ波望遠鏡をもちいて、太陽系惑星大気監視プロジェクト(SPART:Solar Planetary Atmosphere Research Telescope) を推進している。2011年からは金星や火星の一酸化炭素の回転遷移による100/200GHz帯吸収スペクトルのモニタリングを実施しており、談話会では、本プロジェクトの取り組みや、短・中期スケールの観測によって見えてきた太陽系地球型惑星の大気現象や太陽活動との関連について紹介する。また、最近の他波長・他測器による太陽系惑星の地上・衛星観測ミッション・将来計画などについても俯瞰する予定である。

No. 286: July 7th, 2016 (Thu) 15:30 - 16:30

Speaker: 野村英子 (東京工業大学)

Title: TW Hyaまわりの原始惑星系円盤ガス・ダストのALMA観測

Abstract:

近年の赤外線・電波観測技術の向上により、原始惑星系円盤の観測的研究が急激に進展している。すばる望遠鏡などの高空間分解能近赤外線撮像観測により、円盤内のギャップや渦状腕構造など、惑星形成を示唆する構造が明らかになってきた。さらに、大型ミリ波サブミリ波望遠鏡ALMAによる高空間分解能・高感度観測は、円盤内の惑星形成領域のガス・ダスト分布や化学構造を明らかにすると期待される。

本講演では、我々の太陽系から最も近傍に位置するTW Hya周りの原始惑星系円盤ガス・ダストのALMA観測の結果について話しする。最近HL Tau円盤のALMA長基線観測により、円盤内のギャップ・リング構造が明らかになったが、我々は、より年とったTW Hya円盤ダストにもギャップ・リング構造が存在することを発見した。22AUギャップの位置は、すばる望遠鏡の近赤外線撮像観測で見つかったギャップの位置と同程度であった。また2バンド長基線観測の結果、ギャップ内では大きなダストが減少していることが示唆された。ギャップが惑星により形成されたと考えると、海王星よりやや重たい質量の惑星でギャップが形成された可能性がある。一方、長基線観測により22AU以遠にもギャップを発見した。それらのギャップは惑星起源と考えるには浅く幅も狭いため、ダスト表面の氷の焼結など別の起源を考える必要がある。

また我々は、13COとC18O分子輝線の観測より、COガスがスノーラインの内側でも非常に少ないことを明らかにした。ハーシェル宇宙望遠鏡によりTW Hya円盤からはHD分子輝線が観測されているが、その結果と我々の結果を比較すると、ダスト/H2ガス比は通常の分子雲と同程度であるのに対し、CO/H2ガス比は通常の分子雲に比べ、2-3桁も減少していることが明らかになった。COスノーラインの内側でもCOガスが減少している原因としては、COがダスト表面反応により、有機分子など、より大きく蒸発しにくい分子になり、ダスト表面に留まっている可能性がある。TW Hya円盤では、最CH3OHも初検出された。CH3OHはダスト表面でCOより生成され、その一部が非熱的脱離により気相に放出されたと考えられる。

No. 287: July 11th, 2016 (Mon) 15:30 - 16:30

Speaker: 唐津謙一 (TU Delft)

Title: DESHIMAの近況報告と実験室での性能評価

Abstract:

DESHIMA(DEep Spectroscopic HIgh-z MApper)はオンチップ型サブミリ波帯フィルターと運動インダクタンス検出器(MKID)を組み合わせた次世代分光器である. DESHIMA第一世代として326-368 GHzの帯域をカバーしたものの開発を進めており,2017年初頭のASTE望遠鏡への搭載及び試験観測を直近の目標としている. オランダのデルフト工科大学とSRONの協力関係の元,昨年(2015年)夏から本格的なDESHIMA装置の組み上げを進めてきた. 今年(2016年)に入ってデルフト工科大学における実験室の整備が進み,6月にはDESHIMAフロントエンド完成と共に,冷却光学系も含めた装置全体の評価を行うことが可能になった.今回は,DESHIMAフロントエンド完成に至る(苦労)話とその性能評価結果についてお話させて頂く.

No. 288: July 21th, 2016 (Thu) 15:30 - 16:30

Speaker: 勝田哲 (中央大学)

Title: 超新星残骸に伴う非放射性衝撃波(Hαフィラメント)の可視光観測

"Optical Observations of Nonradiative Filaments in Supernova Remnants"

Abstract:

典型的な超新星残骸の可視光スペクトルは、水素のバルマー線に加え、酸素や窒素、硫黄など重元素からの禁制線を示す。これらは、衝撃波によって加熱された星間雲など密度の濃いガスが冷却する際に生じる放射と考えられている。一方、一部の超新星残骸では、重元素からの禁制線を全く示さず、水素のバルマー線が卓越する可視光スペクトルもみられる。これらは衝撃波をトレースする非常に淡いフィラメントとして観測され、その放射エネルギーが衝撃波エネルギーに比べて無視できるほど小さいため非放射性衝撃波などと呼ばれている。その放射メカニズムは、中性ガス(水素)を含む星間媒質を進む(無衝突)衝撃波を素通りした水素が、衝撃波後方で完全電離される前に、励起・電荷交換する際に放たれると考えられている。その分光解析から、衝撃波直後の陽子温度が計測できるため、無衝突衝撃波における電子加熱過程や宇宙線加速を探る貴重なプローブとして重宝されている。本談話会では、我々が実施した非放射性衝撃波の観測結果―「すばる」HDS (long slit)による空間分離・高分散分光観測および木曽 105 cm シュミット望遠鏡による固有運動測定―を中心に今後の期待も交えてお話しする。

No. 289: August 25th, 2016 (Thu) 15:30 - 16:30

Speaker: Nguyen Luong Quang (NAOJ/EACOA Fellow)

Title: The star formation law of ministarburst molecular cloud complex

Abstract:

To link the physical and star formation properties of structures ranging from Giant Molecular Clouds (GMCs), to Molecular Cloud Complexes (MCCs), and to Galaxies, we compare the mutual relations between their masses, mass surface densities, radii, velocity dispersions, star formation rates, and SFR densities using data from the 12CO 1-0 CfA survey and from the literature. We derive universal scaling relations for a comprehensive compilation of molecular cloud structures, spanning 8 orders of magnitudes in size and 13 orders of magnitudes in mass.The Schmidt-Kennicutt diagram is used to distinguish starburst from normal star-forming structures by applying a mass surfce density threshold of 100Msun pc^-2 and SFR surface density threshold of 1Msun yr^-1 kpc^-2. Mini-starburst complexes are MCCs that have enhanced SFR surface density, probably caused by dynamic events such as radiation pressure, colliding flows, or spiral arm gravitational instability which compress material within the MCCs. Because of the dynamical evolution, gravitational boundedness does not play a significant role in characterizing the star formation activity of MCC, especially the mini-starburst complex, which leads to the conclusion that the formation of massive stars and clusters is dynamic.

No. 290: September 8th, 2016 (Thu) 15:30 - 16:30

Speaker: 大須賀健 (国立天文台)

Title: ブラックホール降着円盤とジェットの物理;最近のシミュレーション結果と今後の課題

Abstract: ブラックホール降着円盤は、活動銀河核やX星連星といった高エネルギー天体のエンジンと考えられる。しかしながら、降着円盤の構造や内部でのエネルギー変換メカニズムはよくわかっていない。そこで我々は、輻射磁気流体シミュレーションによって第一原理的に降着円盤、ジェット、円盤風の物理を調べている。その結果、質量降着率によって円盤の構造が変わり、低光度円盤からは磁気ジェットが、高光度円盤(super-Eddington disk)からは輻射ジェットが噴出することがわかった。また、中程度の光度(near-Eddington disk)を持つ円盤からはライン吸収加速による円盤風が吹き出すことがわかった。比較の結果、Super-Eddington diskモデルは超高度X線源(ULX)の観測とよく一致し、ライン吸収加速風が活動銀河核で観測されるUltra Fast Outflowをうまく説明できることもわかった。本講演では最近話題のULXパルサーについての研究成果についても触れる。

No. 291: September 29th, 2016 (Thu) 15:30 - 16:30

Speaker: 中村卓史 (京都大学)

Title: a-LIGOとa-VirgoはO2で何を新たに発見するだろうか?

Abstract: 昨年のO1(Observing run 1)ではa-LIGOは約30Msun-30Msunの連星ブラックホールGW150914の合体からの重力波を初めて検出した。これは我々が種族III星の場合に30Msun-30Msunくらいの合体が起きやすいことを2年前に予言したものとピッタリ合う。 (Kinugawa et al. 2014) しかし、現在GW150914の起源は7つ以上はある。Pop II 星説、原始ブラックホール説等である。これらのどれが正しいかは、O2(Observing run 2)で約10個くらい連星ブラックホールからの重力波が見つかると期待されるので、質量分布の累積分布関数で制限がつくと期待できる。しかし、それぞれの理論には不定の関数と不定のパラメターがあるので、真の解決には赤方偏移分布を決める必要があり、それにはpre-DECIGOが必要なことを議論する。O1が始まる前には連星中性子星が最有力な重力波源候補であった。O2での連星中性子星と中性子星ーブラックホール連星からの重力波の検出可能性についても議論をする。

No. 292: 10月6日(木) 15:30 - 16:30

Speaker: 今田大皓 (宇宙科学研究所)

Title: 幾何光学で物理光学を肩代わりできるのか ー GRASP なしでつくる広視野電波望遠鏡 ー

要旨: CMB 観測など、広い視野の望遠鏡を用いることが本質的である観測計画が増えてきている。 そのような状況下で、多素子の高感度検出器の開発は精力的に進められたが、それらの観測 効率を最大化するような電波望遠鏡光学系の系統だった設計手法は確立していなかった。

これまで広視野電波望遠鏡の光学系を設計する際に用いられることが多かった手法は、光線 追跡からストレール比を計算し、ストレール比が良好な設計に対して物理光学による評価を 行うというものであった。しかし、電波望遠鏡の評価に必要な指標は開口能率やビーム パターンといったものであり、ストレール比とは直結していない。このような方法は物理 光学の計算に比較的時間を要する、どの設計パラメータを調整すれば性能が改善するかの 見極めが極めて難しい、公差解析のような何万通りもの場合を計算すると現実的な時間で 終わらない、といった問題を抱えていた。

Nagai & Imada (2016) と Imada & Nagai (2016) による理論的な考察から、波面 収差とフィードの特性の関数として、開口能率やビームパターンを記述できることが明らかに なった。波面収差は光線追跡から多くの場合において精度よく計算することができ、得られた 波面収差を用いて開口能率を計算する方法を紹介する。この手法を応用すれば、ストレール 比を評価軸にして行っていた光学設計や性能評価を、開口能率やビームパターンを評価軸に した設計、評価にすることができる。

No. 293: 10月27日(木) 15:30 - 16:30

Speaker: 鈴木 建 (東京大学 総合文化研究科)

Title: Evolution of Protoplanetary Discs with Magnetically Driven Disc Winds 磁気駆動円盤風を考慮した原始惑星系円盤の進化

Abstract: The evolution of protoplanetary discs (PPDs), which are the birth place of plants, is still poorly understood; one of the unknowns is the dispersal mechanism of PPDs. It is generally considered that the gas component of a PPD is dispersed by the combination of viscous accretion to the central star and photoevaporation. We proposed that vertical outflows driven by the magneto turbulence in PPDs are a viable mechanism that disperses the gas component of the PPDs. Because the mass flux of the disc winds is inversely proportional to the local Keplerian time, the gas component of a PPD is cleared in an inside-out manner. As a result, the radial profile of the surface density is positive, which is opposites to the radial profile expected from standard accretion models. Such a positive slope strongly affects planet formation because it inhibits the inward drift or even causes the outward drift of pebble- to boulder-sized solid bodies, and it also slows down or even reversed the inward migration of protoplanets.

No. 294: 12月15日(木) 15:30 - 16:30

Speaker: 坂野正明 (ワイズバベル (英文校閲・日英翻訳) http://www.wisebabel.com/ )

Title: 論文英語ことはじめ — 分かる。伝わる。訴える。

Abstract: 論文の執筆は、母国語であっても難儀なもの、まして外国語の英語だと なおさらです。日常英会話とは異なる正式な書き言葉ゆえの注意点も 少なくありません。しかし、言語によらない本質的な部分をしっかり 押さえることで、英語論文もずいぶんと書きやすくなるものです。 本講演では、論文執筆における構造的課題を浮き彫りにすることから はじめて、すっきりとした論文英語を書く道筋をまとめます。その際、 日本語話者による典型的誤りの数々の例をもとに、実戦的な注意点に 特に留意します。第一の対象は学術論文執筆の経験がまだ浅い人です。 とはいえ、経験の多寡によらず、得るものが少なくないことでしょう。 英国在住15年、天文学の元研究者として自身60本を超える査読論文を 発表し、現在英文校閲と翻訳とを専業とする講演者によるセミナーです。

No. 295: 12月22日(木) 15:30 - 16:30

Speaker: 青木和光 (国立天文台)

Title: 宇宙のリチウムの諸問題

Abstract: 水素・ヘリウムに次いで軽い元素であるリチウムは、ビッグバン元素合成から恒 星内部の構造進化まで、さまざまな局面で登場する重要元素である。その起源や 星におけるリチウム組成については、長年の課題が残る一方、最近大きな研究の 進展もある。簡単に諸問題をレビューしたうえで、以下のトピックを紹介する。 (1)ビッグバン元素合成モデルからの予測と初期世代星のリチウム組成の乖離 (2)新星におけるリチウム合成と銀河の化学進化 (3)極端にリチウム組成の高い星

No. 296: 2017年1月5日(木) 15:30 - 16:30

Speaker: 福島登志夫 (国立天文台)

Title: Mosaic Tile Model to Compute Gravitational Field for Infinitely Thin Non Axisymmetric Objects and its Application to Preliminary Analysis of Gravitational Field of M74

題目:モザイク・タイルモデルによる渦巻銀河M74の重力場に関する一考察

Abstract: Using the analytical expressions of the Newtonian gravitational potential and the associated acceleration vector for an infinitely thin uniform rectangular plate, we developed a method to compute the gravitational field of a general infinitely thin object without assuming its axial symmetry when its surface mass density is known at evenly spaced rectangular grid points. We utilized the method in evaluating the gravitational field of the HI gas, dust, red stars, and blue stars components of M74 from its THINGS, 2MASS, PDSS1, and GALEX data. The non axisymmetric feature of M74 including an asymmetric spiral structure is seen from (i) the contour maps of the determined gravitational potential, (ii) the vector maps of the associated acceleration vector, and (iii) the cross section views of the gravitational field and the surface mass density along different directions. An x-mark pattern in the gravitational field is detected at the core of M74 from the analysis of its dust and red stars components. Meanwhile, along the east-west direction in the central region of the angular size of $1'$, the rotation curve derived from the radial component of the acceleration vector caused by the red stars component matches well with that observed by the VENGA project. Thus the method will be useful in studying the dynamics of particles and fluids near and inside spiral galaxies with known photometry data. Electronically available are the table of the determined gravitational fields of M74 on its galactic plane as well as the Fortran 90 programs to produce them. (Reference: Fukushima, T. 2016, MNRAS, 459, 3825-3860)

No. 297: 2017年1月12日(木) 15:30 - 16:30

Speaker: 井上茂樹 (東京大学/IPMU)

Title: 円盤銀河の力学不安定性

Abstract: 渦状腕は近傍宇宙の円盤銀河においてはよく見られる構造である。古くからその形成メカニズムはトゥームレ不安定と呼ばれる、円盤部における軸対称摂動に対する重力不安定性による結果であろうとされてきた。一方で、高赤方偏移(z>1)の宇宙で観測され、近傍円盤銀河の形成期に相当すると考えられている銀河の円盤部分では、渦状腕というよりは、非常に大質量な星団である「クランプ」という構造が見られる。しかし、このクランプの形成メカニズムもトゥームレ不安定であると言われている。本当に渦状腕もクランプもトゥームレ不安定の結果で形成されるのだろうか?同じトゥームレ不安定の結果であるならば、なぜこのような異なる構造になるのだろうか? 本講演では、こうした円盤銀河の力学不安定性に関する、私の最近の研究を二つ紹介したい。ひとつ目は、高精度宇宙論的シミュレーションを用いて、高赤方偏移の円盤銀河に対してトゥームレ不安定性解析を行ったものである。この結果として、クランプの形成は必ずしもトゥームレ不安定ではなく、力学的に安定とされる状態でも形成するものが多くあることがわかった。この結果は、クランプは何か別の物理的なメカニズムで形成している可能性も示している。 ふたつ目は、渦状腕に線形摂動解析を適応することにより、クランプは渦状腕の力学不安定によって形成するのではないか、というシナリオを検証する。星とガスの2成分を考慮した線形摂動解析の結果から、渦状腕の力学不安定性の示すパラメータを導入し、渦状腕が力学不安定によって細かくちぎれてクランプになる不安定条件を解析的に導出した。また、それを孤立系シミュレーションの結果と比較することによって、その正当性を確かめた。 もしも時間に余裕があれば、私の別の研究である、矮小銀河のカスプ・コア問題についても短く話すことができればと思っている。

No. 298: 2017年1月26日(木) 15:30 - 16:30

Speaker: Andreas Schulze (EACOA fellow/NAOJ)

Title: Black hole growth and black hole - galaxy co-evolution

Abstract: Supermassive black holes (SMBHs), found in the center of galaxies, are thought to play an essential role in the evolution of galaxies. Their growth seems to be closely connected to the star formation history of their host galaxies. However, observationally there are still several fundamental unanswered questions regarding the growth of black holes. How is SMBH growth triggered and fueled? What role does AGN feedback and AGN outflows play for galaxy evolution? How do SMBHs grow over cosmic time scales? What role do SMBH mass and accretion rate play in their evolution? I will present recent results and upcoming projects to address these questions observationally and shed new light on the growth history of SMBHs and the connection to their host galaxies. In particular, I will discuss results on the cosmic evolution of the active black hole mass function, accretion rate function and AGN host galaxy mass function and their implications.

No. 299: 2017年2月23日(木) 15:30 - 16:30

講師: 大野良人 (東北大学/Laboratoire d'Astrophysique de Marseille)

題目: 広視野補償光学のためのトモグラフィー波面再構成

要旨: 大気揺らぎの影響を補正する補償光学は地上の大型望遠鏡の性能を最大限発揮す るためにはに必要不可欠なシステムである。近年では、複数のガイド星とトモグラフィー 技術を用いた広視野補償光学が開発・実証されてきている。しかしながら、将来の超大型 望遠鏡用の補償光学システム実現のためには技術的な課題があるのが現状である。 本公演では現在検討されている広視野補償光学と将来の超大型望遠鏡で想定される トモグラフィー波面再構成の課題を紹介する。さらに、すばる望遠鏡に搭載された多天体補 償光学装置の実験機である RAVENでの成果について発表する。また、現在行っている E-ELTの補償光学システムに向けた効率的なトモグラフィー波面再構成手法の研究に ついても紹介する。


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Last-modified: 2017-03-13 (月) 06:53:01