今や、宇宙論パラメーターは高い精度で決定され、長年の謎であった宇宙の平坦性の問題や地平線問題は、ほぼ解決されつつある。しかし、暗黒物質や暗黒エネルギーなどの新たな謎が残り、また一方では、銀河の形成や進化の問題が取り残されている。特に、宇宙における星形成活動の歴史や大規模構造の形成の歴史は、膨張宇宙におけるバリオンから星や巨大ブラックホールを形成する重要なプロセスであり、また、宇宙の化学進化という重要な問題と緊密に関係しているにも拘わらず、未解明課題として残っている。

我々は、ミリ波サブミリ波帯の超広帯域観測に基づき、宇宙初期における星形成活動の歴史と大規模構造の形成を明らかにする事を提案する。ミリ波サブミリ波という波長帯は、初期宇宙におけるダストに隠された星形成活動を探る上で特に有効である。この波長帯で、従来には実現していない、充分に広範な範囲(統計的に意味のある広さ)で形成途上にある遠方の大質量星形成銀河(いわゆるサブミリ波銀河)を探査し、さらに、独自の手法でそれらの距離を求め、宇宙の各時代での星形成活動と大規模構造を捉えることを目標とする。本課題が提案する手法では、膨大な星間塵(ダスト)に遮られ、可視光や赤外線では捉えられない、隠れた大質量星形成銀河を新たに膨大に検出し、かつ、その距離を直接測定することができる。すなわち、宇宙における真の星形成活動とその大規模構造を捉え、かつ、その変遷を辿る、という、極めて重大な意義がある。既に準備観測に着手しており、これまでの遠方銀河の観測の歴史を質・量ともに塗り替えるデータを手にしている。本課題が推進されれば、今後、世界の最先端を走る研究の展開が可能である。


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