IoA Seminar 2013 / 2013年度・東京大学・天文学教育研究センター・談話会

次回以降の談話会

第232回: 2013/10/03 (Thu) 15:30-16:30

Speaker: 紀基樹 (宇宙科学研究所)

Title: 活動銀河核ジェット最深部の磁場強度

Abstract: 活動銀河核で観測される相対論的ジェットの形成メカニズムは、未解決の難問である。
この問題解決に向けた本質的な課題は、ジェットの根元でのエネルギー収支を明らかにすることである。
おとめ座中心のM87ジェットは、VLBI観測によって100シュバルツシルト半径以下まで構造分解されており、
ジェット最深部を探る最適な天体として注目を浴びている。そのM87ジェットにおいて、以下に述べる2つ
の観測的進展があった(Hada et al. 2011, 2013)。
(1) 電波コアの位置が周波数に依存してシフトする現象を多周波相対VLBI観測で検出した。コアシフトの
検出は、観測周波数がシンクロトロン自己吸収ブレーク周波数に等しいことを意味する。
(2) SN比の高い複数エポックにおける43GHz電波コアサイズを計測した。M87の中心ブラックホール質量が
60億倍太陽質量の場合、43GHz電波コアの視直径は16倍のシュバルツシルト半径に対応する。

今回われわれは、上述の観測事実を基に、43GHz電波コア内の磁場と相対論的電子のエネルギー密度比を
推定した。まず、43GHz電波コア内は一様と仮定した。そして、シンクロトロン自己吸収ブレーク周波数
43GHzにおける観測で得たコアサイズおよびフラックス、相対論的電子のランダムローレンツ因子の
最小値を用いて、磁場および相対論的電子のエネルギー密度を一意に求めた。
次に、これらのエネルギー密度を用いて推定されるM87ジェット根元でのジェットパワーは、キロパーセク
スケールで求められているジェットパワー以下であるという制限を課した。その結果、M87ジェット根元での
磁場強度は高々10ガウス程度であり、中心ブラックホール周辺でしばしば仮定される磁場強度10^3-4ガウス
(例えば Levinson & Rieger 2011)よりも有意に小さいことが明らかになってきた。

趣旨

東京大学・天文学教育研究センターでは2003年4月から, 院生コロキウムに引き続き, 談話会を開いています.
第一線で活躍されている研究者の方々を講師にお招きし, 最先端の研究成果をお話しいただきます.
講師の方には, 大学院生の参加者のことも考慮し, レビュー的な側面も含めた上で, ご自身の研究紹介をお願いしています.

日時

場所

標準タイムテーブル

13:30-14:30院生コロキウム講義室
15:30-16:30談話会講義室
16:30-お茶の時間講義室横のお茶部屋~講師の方を交えて~

世話人

予定

#日付講演者 (所属)タイトル
2322013/10/03(Thu)紀 基樹(宇宙研)活動銀河核ジェット最深部の磁場強度
2332013/10/24(Thu)須田拓馬(国立天文台)
2342013/10/31(Thu)米徳大輔 (金沢大)
2352013/11/14(Thu)鶴剛(京都大)
2362013/11/21(Thu)岡朋治(慶應大)
2372013/11/28(Thu)小山佑世(国立天文台)
2013/12/20(Fri) 13:30-14:30松岡良樹(国立天文台/プリンストン大)

終了した談話会(今年度)

詳細はこちら: 平成25 (2013) 年度談話会

#日付講演者 (所属)タイトル
2312013/10/02(Wed) 11:00-12:00岸本 真(MPI)A unifying view of AGN sub-pc scale structure as directly revealed by infrared interferometry
2302013/09/06(Fri) 13:30-14:30Alain Omont (Institut d'Astrophysique de Paris, CNRS and UPMC)Herschel high-z sub-millimeter galaxies and gravitational lenses: H2O, a new diagnosis of their starburst
2292013/07/18(Thu)川中宣太(東大)天体起源の宇宙線電子・陽電子について
2282013/06/28(Fri) 13:30-14:30井上開輝(近畿大)ミニ重力レンズで探るダークマターの起源
2272013/06/27(Thu)戸谷友則(東大)すばるFMOSによる銀河赤方偏移サーベイで迫る宇宙の加速膨張:Fast Sound プロジェクトの進展状況
2262013/06/13(Thu)新永浩子(国立天文台/チリ観測所)Submillimeter Astronomy at Mauna Kea
2252013/06/06(Thu)高橋智子(国立天文台/チリ観測所)Millimeter and Sbumillimeter studies of the Orion Molecular Filaments
2242013/05/30(Thu)田中賢幸(国立天文台)On the formation time scale of massive cluster ellipticals based on deep near-IR spectroscopy at z~2
2232013/05/23(Thu)南谷哲宏(東大/IoA)Physical Properties of Dense Molecular Clumps in the Small Magellanic Cloud
2222013/05/16(Thu)Gu Liyi(Univ. Tokyo/RESCEU)Multi-wavelength Probe of Galaxy-Hot Plasma Interaction in Rich Clusters of Galaxies
2212013/05/09(Thu)遠藤 光(Delft University of Technology)アストロフォトニクス:オンチップ超伝導分光計DESHIMAの研究開発
2202013/04/26(Fri) 13:30-14:30Malte Schramm(IPMU)The co-evolution between black hole and galaxy over the past 12 billion years.
2192013/04/18(Thu)真喜屋 龍(東大/IoA)宇宙論的銀河形成モデルへの新たなフィードバック機構の導入
2182013/04/11(Thu)小麦真也(国立天文台ALMA東アジアセンター)星形成則の多変数化:星間物質の基本平面の発見

昨年度までの談話会


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