No. 262: 2015/4/9 (Thu) 15:30-16:30

Speaker: Linda Tacconi (MPE Garching)

Title: The Evolution of Molecular Gas and Star Formation from the Peak Epoch of Galaxy Formation to the Present

Comprehensive and systematic studies of the molecular content of galaxies during the epochs that are associated with the peak (z~1-2), and subsequent winding down (z<1) of star formation in the Universe are enabling us to illustrate the important role that cold gas, , the fuel for star formation, has played in the assembly of galaxies across cosmic time. Surveys, including COLDGASS and PHIBSS1&2, already provide robust molecular gas detections in hundreds of normal, star forming galaxies, from redshifts 0-2.5. In this talk, we focus on results from PHIBSS, comprising two IRAM Large Programs, where we are we have are mapping the CO J=3-2 or J-2-1 line emission in ~200 such galaxies from z=0.5-2.5; we find that galaxies at these epochs are very gas rich, relative to their star-forming counterparts in the local Universe. We discuss scaling relations for massive star forming galaxies that we derive from these data, and the impact of all of these new observations on our understanding of galaxy evolution in the early Universe.

No. 263: 2015/4/16 (Thu) 15:30-16:30

Speaker: Masao Saito (Nobeyama Radio Observatory, NAOJ)

Title: Starformation Project: SOLA

The multi-national SOLA (Soul of Lupus with ALMA) consortium has initiated a very large program to conduct comprehensive studies of the Lupus Molecular Clouds and their star formation processes. The long-term goal is to exploit ALMA and other growing observational capabilities in the southern hemisphere to establish the Lupus region as a prototypical low-mass star forming region on a par with, for example, the Taurus clouds in the northern sky. In this talk, I present how I started the SOLA project and how I managed the team together with the latest status.

No. 264: 2015/5/14 (Thu) 15:30-16:30

Speaker: 秋山和徳 (水沢VLBI観測所, NAOJ)

Title: EHTによるM87のブラックホールの事象の地平面付近の探査

おとめ座銀河団の中心に位置する巨大電波銀河M87 は全天で二番目に角半径が大きい超巨大ブラックホールを有し、国際サブミリ波VLBI 観測網Event Horizon Telescope (EHT) の初期観測によって 5.5 Rs の構造が検出されるなど、ブラックホールの事象の地平面の直接撮像が期待されている天体である。本講演では2012 年に行われたEHT のM87 の1.3 mm 帯の初期観測の結果を報告する。

本観測では事象の地平面の構造のイメージングに必要となるクロージャー位相とよばれる観測量の検出に初めて成功した。M87 の1.3 mm波帯の事象の地平面近傍の放射構造として、アプローチング・ジェット卓越型, カウンタージェット卓越型, 降着円盤卓越型の3つのモデルが提案されているが、観測されたクロージャー位相はこれらの理論的予想と一致した。また現状モデルの切り分けは困難である が、2015 年以降のALMA 等が参加するアレイでは切り分けが可能になり、事象の地平面近傍の放射構造に非常に強い制限が与えられることが分かった。

M87 の事象の地平面近傍の構造の輝度温度は2x10^10 K であり、ブラックホールから10^2 Rs 以内に存在する1-86 GHz 帯の電波コアのピークの輝度温度と概ね一致する。これはジェットの磁場のプロファイルがB ∝ r^-1 に近いことを示唆しており、今後のEHT や3 mm 帯の観測、超解像度イメージングを駆使した低周波帯の観測などによりジェットの生成に重要な役割を果たす磁場構造の解明に大きな進展が期待される。

本観測はさらに超巨大ブラックホール近傍で起きた超高エネルギーガンマ線の増光期に実施され、EHTの高い空間分解能や国立天文台のVERA によるフォローアップ観測によって超高エネルギーガンマ線の放射領域の大きさに強い制限を与えることにはじめて成功している。

これらの観測的成果に加えて、近年、本間、秋山、田崎ら日本のグループが進める疎性モデリングを用いた新たな電波干渉計のイメージング技法の 登場などにより、EHT による事象の地平面の撮像の実現可能性は飛躍的に高まってきている。最後に今後のEHT の展望を紹介したい。

No. 265: 2015/5/21 (Thu) 15:30-16:30

Speaker: Toshio FUKUSHIMA (NAOJ)

Title: Precise and fast computation of generalized Fermi-Dirac integral by parameter polynomial approximation

The generalized Fermi-Dirac integral, $F_k(\eta,\beta)$, is approximated by a group of polynomials of $\beta$ as $F_k(\eta,\beta) \approx \sum_{j=0}^J g_j \beta^j F_{k+j} (\eta)$ where $J=1(1)10$. Here $F_k(\eta)$ is the Fermi-Dirac integral of order $k$ while $g_j$ are the numerical coefficients of the single and double precision minimax polynomial approximations of the generalization factor as $\sqrt{1+x/2} \approx \sum_{j=0}^J g_j x^j$. If $\beta$ is not so large, an appropriate combination of these approximations computes $F_k(\eta,\beta)$ precisely when $\eta$ is too small to apply the optimally truncated Sommerfeld expansion (Fukushima, 2014, Appl. Math. Comp., 234, 417). For example, a degree 8 single precision polynomial approximation guarantees the 24 bit accuracy of $F_k(\eta,\beta)$ of the orders, $k=-1/2(1)5/2$, when $-\infty < \eta \le 8.92$ and $\beta \le 0.2113$. Also, a degree 7 double precision polynomial approximation assures the 15 digit accuracy of $F_k(\eta,\beta)$ of the same orders when $-\infty < \eta \le 29.33$ and $0 \le \beta \le 3.999 \times 10^{-3}$. Thanks to the piecewise minimax rational approximations of $F_k(\eta)$ (Fukushima, 2015, Appl. Math. Comp., 259, 708), the averaged CPU time of the new method is only 0.9--1.4 times that of the evaluation of the integrand of $F_k(\eta,\beta)$. Since most of $F_k(\eta)$ are commonly used in the approximation of $F_k(\eta,\beta)$ of multiple contiguous orders, the simultaneous computation of $F_k(\eta,\beta)$ of these orders is further accelerated by the factor 2--4. As a result, the new method runs 70-450 times faster than the direct numerical integration in practical applications requiring $F_k(\eta, \beta)$.

No. 266: 2015/6/11 (Thu) 15:30-16:30

Speaker: 諸隈佳菜 (NAOJ)

Title: 0<z<2における銀河の低温ガス量の進化: ガスを残しつつ星形成を止めるフィードバックの必要性

多くの銀河形成モデルは観測される銀河の星質量関数を再現するように、星形成の直接的材料である低温ガスを加熱・吹き飛ばすフィードバックを入れている。 そのような銀河形成モデルが、観測される銀河の低温ガスの量も再現しているか検証した。 その結果、10^10-11 Msunの星質量範囲では観測と一致するが、低質量・大質量側では、低温ガスの量を過小評価していることが明らかになった。 このことは、銀河形成モデルにおけるフィードバックが効きすぎていること、ガスを残しつつ星形成を止めるプロセスの必要性を示唆している。 本講演では、上述した研究と関連する最近の研究も合わせて紹介する。

No. 267: 2015/7/2 (Thu) 15:30-16:30

Speaker: 江草芙実 (NAOJ)

Title: Spiral structures of nearby galaxies from CO observations

近傍銀河の約半数は渦巻銀河に分類される。 しかし、渦巻構造の起源や維持機構・寿命などについては、 50年以上議論が続いているにもかかわらず、統一的な見解が得られていない。 そこで今回は、分子ガスのトレーサーであるCO輝線観測をもとにした、 2つの研究結果を紹介する。

1つめは、星の質量分布と分子+原子ガスの質量分布のピーク位置のずれ (=offset)の銀河円盤内での変化である。 理論計算により、腕構造が長寿命(1Gyr程度)である場合には、 このずれが銀河中心からの距離やガスの自己重力の強さに依存すると 考えられるが、近傍渦巻銀河M51で測定したoffsetには、 そのような依存性は見られなかった。 その結果、M51の腕構造は数百Myr程度の時間で変化していると考えられる。

2つめは、COとHαのピーク位置のずれから 腕構造のパターン速度と星形成時間を推定する手法(offset法)である。 12の近傍渦巻銀河にこの手法を適用した結果、 5つの銀河でパターン速度と星形成時間を決定できた。 星形成時間は数〜数十Myrであることから、星形成過程においては 分子雲の自己重力が重要であると考えられる。

No. 268: 2015/7/9 (Thu) 15:30-16:30

Speaker: John W Menzies (South African Astronomical Observatory)

Title: The Southern African Large Telescope

The Southern African Large telescope (SALT) is the largest single telescope in the southern hemisphere.Its primary mirror comprises 91 hexagonal segments, each 1 metre across, giving an effective collecting diameter of 9.2 metre. SALT is owned by a number of international partners, of which South Africa is the largest shareholder. I will introduce the telescope, some of its unusual features, and the current suite of instruments. I will finish with some examples of recent science completed with SALT.

No. 269: 2015/7/23 (Thu) 15:30-16:30

Speaker: Kohei Ichikawa (NAOJ)

Title: 赤外線観測によるAGNトーラスの研究

活動銀河核 (AGN) の統一モデルによると、すべての AGN は広輝線領域と ドーナツ状のトーラスを持ち、1 型 AGN と 2 型 AGN の違いは観測の視線 方向の違いで説明できる。この「中心を隠すもの」として提案されたトー ラスであるが、そのサイズ・そして種々の幾何構造は、実は中心エンジン、 そして母銀河と強い関わりがあることが示唆されており、超巨大ブラック ホールと母銀河の共進化に欠かせない構成要素であることがわかってきた。

トーラスは中心エンジンによって温められ、その再放射によって中間赤外 線で明るく輝くことが知られている。本講演では、我々が中間赤外線観測 を通して行ってきた研究、特に 1) AGNトーラスモデルへの制限 2) 埋もれ たAGNの探査 3) 種族ごとのトーラスの幾何構造の違いについて紹介する。 また、時間が許せば、我々が最近興味を持っている特殊な性質を持ったAG Nについても、簡単に紹介したい。

No. 270: 2015/9/24 (Thu) 15:30-16:30

Speaker: 深川美里(国立天文台・チリ観測所)

Title: サブミリ波・近赤外撮像で探る惑星形成

 系外惑星が普遍的に存在することは明らかとなっているが、それら及び太陽系 惑星がどのように形成したのかは全く分かっていない。惑星形成の過程を理解す るには、原始惑星系円盤で実際に何が起こっているのかを、観測で知る必要がある。  近年、近赤外線では補償光学の性能向上や観測手法の工夫により、星から100AU 以内において10 AU未満の構造を空間分解できるようになっている。すばるを 用いた我々の撮像観測からは、年齡100万年程度のA・F型星について、スパイラル アームや強い非軸対称構造を示す円盤が複数存在することが明らかとなった。 また、ALMAによる観測が始まり、従来標準とされてきた惑星形成理論の改善、 あるいは複数の形成過程の考慮を促すデータが得られつつある。例えば、我々が 観測した円盤においては、星から100 AU以上離れた場所でダスト柱密度が局所的に 上昇している領域が見つかり、ガス・ダスト質量比が円盤内で大きく変化してい る兆候もとらえられた。  本談話会では、このように日本のグループが中心となって行っている原始惑星 系円盤の観測研究について紹介する。

No. 271: 2015/10/08 (Thu) 15:30-16:30

Speaker: 川島朋尚 (国立天文台/Center for Computational Astrophysics)

Title: 数値シミュレーションで探るブラックホール降着流・噴出流の観測的特徴

要旨:ブラックホールへの質量降着率や、輻射とアウトフローによるエネルギー放出率、 そしてそれらのメカニズムを明らかにすることは、ブラックホールの成長や母銀河 との共進化を理解する上で必要不可欠である。 ブラックホール周囲の複雑なガスの振る舞いを理解するためには、観測データとの 比較によって理論モデルを検証することが極めて重要である。

談話会では、われわれが実施した輻射流体シミュレーション・データを用いた超臨界降着流 (エディントン限界を超える降着流)の輻射スペクトル計算結果を紹介する。超高光度X線源の X線スペクトルが恒星質量ブラックホールへの超臨界降着モデルで説明できることを示し、 今後の課題についても議論する。また、最近われわれが実施しているG2と相互作用する 銀河中心ブラックホール高温降着流の磁気流体シミュレーション結果を紹介し、今後 約10年の時間スケールで起こると期待される増光について議論する。

No. 272: 2015/10/15 (Thu) 15:30-16:30

Speaker: 新納悠 (国立天文台光赤外研究部)

Title: ガンマ線バーストの起源を探る

要旨:継続時間の長いガンマ線バースト(long GRB)は宇宙最大の爆発現象といわれ、少なくともその一部は大質量星の重力崩壊によって引き起こされると考えられている。しかし、大質量星の重力崩壊が必ずlong GRBを引き起こすわけではなく、どのような星がGRBの起源となっているのかは解明されていない。

 2000年代の理論的・観測的研究は金属量の少ない大質量星がlong GRBを引き起こしやすいことが示唆してきた。しかし2010年以降、従来研究の問題点が指摘されるとともに、高金属な起源星の存在を示唆する観測例も複数報告され、long GRBの起源を低金属星とする理解に疑問が投げかけられている。

 この談話会ではlong GRBの起源の解明に向けたこれまでの理論的・観測的研究をレビューし、従来研究の問題点を克服するために近年とりくまれている研究を、我々のグループによるSubaru/Gemini時間交換プログラムを利用した分光キャンペーンの結果を中心に紹介する。

No. 273: 2015/10/29 (Thu) 15:30-16:30

Speaker: 浜名崇(国立天文台理論研究部)

Title: 重力レンズ銀河団計測による宇宙論パラメーター推定とHSC surveyによる重力レンズサイエンス

要旨:銀河団はその数密度や空間相関が宇宙の初期密度場の情報を保持しているため 宇宙論パラメータを探る有力な手段となっており、また銀河団中の暗黒物質の密度分布は 暗黒物質の性質を探る手がかりとなるなど、宇宙論研究における有用な天体である。 従来銀河団は、銀河集中や銀河団中の高温プラズマによるX線放射を用いて探査されてきた。 一方、銀河団はその深い重力ポテンシャルにより、比較的強い重力レンズ効果を引き起こす。 私は、すばる望遠鏡SuprimeCamによる11平方度の撮像データを用いて重力レンズ解析を行い その領域の暗黒物質密度分布を求め、そこから7銀河団を検出した。 このデータを用いて、世界で初めてとなる重力レンズ銀河団計測による宇宙論パラメーター推定を行った。 またその将来的な有用性を評価した。

 談話会では、始めに重力レンズ現象と銀河団についての基礎的事項をおさらいした後 上記研究(Hamana et al. 2015, PASJ, 67, 34)を紹介します。 最後に現在進行中のHyper SuprimeCam surveyによる大規模サーベイデータを用いた 関連研究の現状と展望を紹介します。

No. 274: 2015/11/05 (Thu) 15:30-16:30

Speaker: 利川潤 (国立天文台光赤外研究部)

Title: 広視野観測を用いた原始銀河団探査

要旨:近傍宇宙の観測から銀河団銀河とフィールド銀河では性質が異なり、 銀河の性質と環境には密接な関係があることが知られている。 また銀河団は宇宙の大規模構造において、フィラメントの結合点の ような最も密度が高いところに位置している。 このことから遠方宇宙に存在する形成途中の銀河団(原始銀河団)を 研究することは、銀河進化や構造形成の理解に繋がると考えられる。

我々はSubaru Deep Field、CFHT Legacy Survey Deep Fieldsにおいて 赤方偏移3から6にわたって原始銀河団探査を行なった。 これまでの研究をレビューした上で、我々の探査の結果を報告する。 またHSC Surveyを用いた将来計画も紹介したい。


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