第219回: 2013/4/18(木) 15:30-16:30

真喜屋 龍 (東京大学天文学教育研究センター) 「宇宙論的銀河形成モデルへの新たなフィードバック機構の導入」

近年の観測から、銀河のガス面密度やダスト面密度が小さくなると
星形成効率が急激に低下することがわかってきた (e.g., Kennicutt 2012) 。
これは、ダスト面密度が小さい銀河では UV photon が浸透しやすく水素
分子の破壊や dust photoelectric heating によるガスの加熱が起こり星形
成が抑制される、と考えれば自然に理解することできる。
我々は今回、このようなダストの面密度に依存した星形成則を我々の持つ
宇宙論的銀河形成モデルに導入し、銀河形成史にどのような影響を与える
かを調べた。結果として、このようなダスト面密度に依存した星形成則を
考えることで、小質量銀河での星形成を抑えつつ同時に大質量銀河の早期
形成が促進されることがわかった。またそれによって、銀河の光度関数の
進化を従来のモデルより自然に再現できることがわかった。

第218回: 2013/4/11(木) 15:30-16:30

小麦真也(国立天文台ALMA東アジアセンター)「星形成則の多変数化:星間物質の基本平面の発見」

銀河は数kpcのスケールではガス密度に対して星形成率が指数関数的に増加する
という経験則がある。近年、巨大分子雲のスケール(~100pc)ではこの法則が
成立しなくなる事がわかってきた。このスケールでは分子雲個々の進化段階が大
きく関わってくるためだと考えられている。一方、分子雲から星を形成する上で
は進化段階以外にも星間塵や星間輻射場、高密度ガス成分の量など多くの変数が
関わってくることは明らかである。我々は、この複雑に相互作用しかつ時間変化
するシステムを統一的に説明するために野辺山の45m電波望遠鏡やASTE望遠鏡、
データベースなどを利用して超近傍の銀河M33の分子雲に対して多変数解析を行った。
その結果、巨大分子雲のスケールでガス密度と星形成率はたしかに相関しないが、
ダストや星間輻射場、高密度ガスなどを含めるとこれらの変数は3次元での平面を
二つ構成する事がわかった。これらが他の銀河でも一般的なものであれば、系内・
近傍銀河・遠方銀河の研究をつなぐ重要な結節点となる可能性がある。

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