要旨:ブラックホール X 線連星は、星質量ブラックホールと恒星の近接連星系であり、 候補天体も含め銀河系内に数十天体程度見つかっている。その多くはトランジェント 天体であり、普段は非常に暗いが、突然急増光を引き起こし、数日から数十日という 短い時間スケールで X 線光度が数桁も上昇する。光度変化にともなって、X 線 スペクトルの形状や時間変動の特徴が大きく異なるいくつかの「状態」が現れ、 光速の 90% を超える電波ジェットや、降着円盤に沿って噴き出す円盤風も観測 される。近年、これらの観測的特徴とその劇的な変化を、幅広い光度 (= 質量降着率) の範囲にわたって詳しく調べることで、ブラックホール降着流・噴出流の形成と 進化を理解するための手がかりが得られつつある。
本講演では、これまでのブラックホール X 線連星の観測的研究についてレビューを 行うとともに、我々の最近の X 線観測による成果を紹介する。時間に余裕があれば、 来年打ち上げ予定の ASTRO-H 衛星により期待されるサイエンスについても触れたい。
東京大学・天文学教育研究センターでは2003年4月から, 院生コロキウムに引き続き, 談話会を開いています. 第一線で活躍されている研究者の方々を講師にお招きし, 最先端の研究成果をお話しいただきます. 講師の方には, 大学院生の参加者のことも考慮し, レビュー的な側面も含めた上で, ご自身の研究紹介をお願いしています.
13:30-14:30 | 院生コロキウム | 講義室 |
15:30-16:30 | 談話会 | 講義室 |
16:30- | お茶の時間 | 講義室横のお茶部屋~講師の方を交えて~ |
# | Date | Speakers | Title |
275 | 2015/11/26 (Thu) | 志達めぐみ(理化学研究所) | ブラックホール X 線連星の降着流・噴出流の観測的研究 |
276 | 2015/12/17 (Thu) | 野沢貴也(国立天文台理論研究部) | (TBA) |
詳細はこちら: 平成27 (2015) 年度談話会
# | 日付 | 講演者 (所属) | タイトル |
262 | 2015/4/09(Thu) | Linda Tacconi (MPE Garching) | The Evolution of Molecular Gas and Star Formation from the Peak Epoch of Galaxy Formation to the Present |
263 | 2015/4/16(Thu) | 齋藤正雄 (NRO, NAOJ) | Starformation Project: SOLA |
264 | 2015/5/14 (Thu) | 秋山和徳 (水沢VLBI観測所, NAOJ) | EHTによるM87のブラックホールの事象の地平面付近の探査 |
265 | 2015/5/21 (Thu) | Toshio FUKUSHIMA (NAOJ) | Precise and fast computation of generalized Fermi-Dirac integral by parameter polynomial approximation |
266 | 2015/6/11 (Thu) | 諸隈佳菜 (NAOJ) | 0<z<2における銀河の低温ガス量の進化: ガスを残しつつ星形成を止めるフィードバックの必要性 |
267 | 2015/7/2 (Thu) | 江草芙実 (NAOJ/チリ観測所) | Spiral structures of nearby galaxies from CO observations |
268 | 2015/7/9 (Thu) | John W Menzies (South African Astronomical Observatory) | The Southern African Large Telescope |
269 | 2015/7/23 (Thu) | 市川幸平 (NAOJ) | 赤外線観測によるAGNトーラスの研究 |
270 | 2015/9/24 (Thu) | 深川美里 (NAOJ/チリ観測所) | サブミリ波・近赤外撮像で探る惑星形成 |
271 | 2015/10/08 (Thu) | 川島朋尚 (NAOJ/CfCA) | 数値シミュレーションで探るブラックホール降着流・噴出流の観測的特徴 |
272 | 2015/10/15 (Thu) | 新納悠(国立天文台光赤外研究部) | ガンマ線バーストの起源を探る |
273 | 2015/10/29 (Thu) | 浜名崇(国立天文台理論研究部) | 重力レンズ銀河団計測による宇宙論パラメーター推定とHSC surveyによる重力レンズサイエンス |
274 | 2015/11/05 (Thu) | 利川潤(国立天文台光赤外研究部) | 広視野観測を用いた原始銀河団探査 |