Abstract: 2017年頃からの稼働を予定している次世代重力波望遠鏡によって、 連星中性子星合体からの重力波が直接検出されることが期待されています。 しかし、重力波による位置決定精度は数10平方度程度であり、 重力波源の天体物理学的な起源を明らかにするためには、 電磁波観測による天体の同定が必要不可欠です。 談話会では、(1) このような突発天体を探すために、 私たちが木曽観測所シュミット望遠鏡やすばる望遠鏡を用いて行っているサーベイの現状と (2) 連星中性子星合体から期待される電磁波放射の理論的研究を紹介します。 これらをもとに、重力波天文学時代にどのような電磁波観測が必要かを議論します。
Abstract:ドームふじ基地は昭和基地から1000km内陸の高地にある 日本の南極基地である。標高3800m、気温-20~-80℃の環境のため 大気中の水蒸気が極めて少なく、1THz以上の領域でも大気の窓が 開くと期待される。筑波大学、東北大学、極地研究所を中心とした グループはドームふじ基地に10m級のテラヘルツ望遠鏡、2.5m級の 赤外線望遠鏡を設置し、この南極の大気を活かした天文観測を実現 すべくサイト開拓と望遠鏡開発を進めている。 テラヘルツ望遠鏡の設置に向け、私たちはプロトタイプとなる 可搬型サブミリ波望遠鏡を開発した。可搬型望遠鏡は30cmの口径と、 500GHz帯ヘテロダイン受信機を備え、南極での望遠鏡運用技術の 獲得とサイエンスの実証を目的にサブミリ波輝線、CO(J=4-3)輝線 および[CI](3P1-3P0)輝線での銀河面サーベイを行う。本講演では、 南極望遠鏡計画と開発した可搬型望遠鏡を紹介し、ドームふじ基地 での運用に先立ちチリで実施した試験観測の結果およびテラヘルツ 望遠鏡開発の進捗を報告したい。
Abstract: N体シミュレーションは星一つ一つの運動を計算することで、恒星系全体の進化 を明らかにすることができる強力なツールである。N体シミュレーショ ンを用いた 星団の力学的進化に関する研究は、長年主流だった球対称かつ力学平衡の理想的な モデルから、近年、より現実の星形成領域に近いフィラメ ント状やクランプ状の 構造を模したモデルへと移行しつつある。今回の談話会では、基礎となる 球対称モデルから、分子雲のフィラメント構造に沿った 星形成を仮定したモデルまで、 星団の力学的進化という視点から紹介する。
Abstract: The magnetic field of astrophysical objects is generated by the dynamo effect: an instability that converts kinetic energy into magnetic one. Since the beginning of the 20th century, it is known that the magnetic field of the Earth does not remain of same direction at all time but from time to time it reverses and changes polarity. I will show results of recent laboratory experiments in which a magnetic field is generated by dynamo effect and reverses in an apparently random manner. I will explain what mechanism is responsible for magnetic field reversals in the experiment and show that this mechanism explains several properties of the dynamics of the Earth's magnetic field.
Abstract: 初期宇宙で生まれた星(初代星)は銀河系の星と比べると質量が大きかったと考えられている。具体的にその典型質量が
いくらだったのか、またその質量分布がどんな形をしていたのかという問題は最も基本的かつ未解決の問題である。 このセミナーでは、特に最近活発に議論されているこの初代星の質量、質量分布問題の最近の進展についてまとめる。 星質量が決定される過程では、原始星誕生後のガス降着段階(又は後期段階)にどれほど星質量が増加するかが鍵を握る。 最近の進展はこの時期の進化の多次元輻射流体シミュレーションが可能になったことが大きい。大まかには、星周円盤の 重力不安定による分裂、原始星からの輻射フィードバック等により個々の星に降り積もるガス質量が下がるため、最終的に得られる 星質量は以前考えられていたより低いというのが主な論調である。これは銀河系の金属欠乏星の組成分布から期待される質量域と 合うため好まれる傾向がある。統計的な研究も進み、具体的な質量分布を理論的に導く試みもなされている。その一で、z>6で すでに10^9Msunを上回る超巨大ブラックホールが存在することが観測的に知られるようになり、この起源として超大質量天体の 形成可能性も並行して議論されている。これらの現状とともに、さらなる将来展望も合わせてお話ししたい。