Abstract: 位置天文観測衛星Gaiaを用いて、どのような系外惑星が見つかるか、またどのような星質量ブラックホールが見つかるかを検討した。
まず、Gaiaを用いた惑星探査についてであるが、過去に複数のグループによって検討され、万単位の惑星系が新たに見つかると期待されている(Casertano+08, Perryman+ 14)。しかし、Gaiaミッション期間である5年を超える長周期の惑星に対しては、検出条件を含め詳細な検討がなされていない。このような長周期惑星は 直接観測が可能であるため、地球からどの程度の距離でどのような中心星の惑星系が見つかるかという情報は観測戦略上重要である。したがって、 本研究では幾何学的な検出条件を与え解析的に探査可能惑星について調べた。その結果、10倍の木星質量程度の惑星であれば数日から200年程 度の周期でM型星(地球から10pcの距離)周りを回るものが見つかることが分かった。
次にGaiaを用いたブラックホール探査についてであるが、これまで1万個程度 のブラックホール連星系がGaiaで検出可能であることがわ かっている(川中氏学会発表)。この数は、これまで見つかっているブラックホールX線連星系の数(~50個)を遥かに凌ぐものである。しか し、この検討はブラックホールと連星系を組む伴星(主系列星または巨星)のうちGaiaで測光観測可能な星の数を数えたものであり、位置天文 観測でブラックホールを同定できる数ではない。本研究では位置天文観測でどのような周期のブラックホール連星が検出可能かを見積もった。その結果、5太陽質量のブラックホールであれば数日から100年程度の周期の連星系が見つかることがわかった。これを元に、Gaiaで同定できる ブラックホール連星系の数を見積もることができる。
Abstract:
太陽は最も近い星であるにもかかわらず、基本的な問題が未だ解明されていない。問題を列挙すると、黒点の周期的増減を説明する「太陽ダイナモ問題」、六千度の光球上に一万度と百万度の大気を作る「彩層・コロナ加熱問題」、太陽圏全体に影響を及ぼす爆発現象である「太陽フレアの予測および粒子加速問題」である。これらの問題の根本は、天体における磁場の生成・移送・消散の理解であり、太陽だけでなく他天体を理解する上でも重要である。これらの問題の解決のため、様々な波長や手法による観測や理論的研究が行われてきている。 この4月末に締め切られたALMA Cycle4から、太陽の観測提案が受け付けられるようになった。ALMAにとって初めての太陽観測の共同利用公募であり、ALMAの機能がすべて太陽観測にて利用できるわけではないが、世界中から多くの太陽観測提案が寄せられた。 本セミナーでは上記の太陽物理での大問題をレビューし、試験観測のデータを基にALMAによりこれらの問題解決にどのように寄与できるのかを議論する。
Abstract:
近年、系外惑星の探査研究が目覚しい。初期のM-G型星の活動は活発だったという議論もあり、中心星が周囲の惑星の中層大気の物理・化学的環境、ハビタブルゾーンに与える影響について、より詳しい理解が急務となってきている。そこで、我々はまずG型星である太陽の現在の活動が地球型惑星の中層大気にどのような影響を与えているか理解を深めるべく、国立天文台野辺山宇宙電波観測所の口径10 mのミリ波望遠鏡をもちいて、太陽系惑星大気監視プロジェクト(SPART:Solar Planetary Atmosphere Research Telescope) を推進している。2011年からは金星や火星の一酸化炭素の回転遷移による100/200GHz帯吸収スペクトルのモニタリングを実施しており、談話会では、本プロジェクトの取り組みや、短・中期スケールの観測によって見えてきた太陽系地球型惑星の大気現象や太陽活動との関連について紹介する。また、最近の他波長・他測器による太陽系惑星の地上・衛星観測ミッション・将来計画などについても俯瞰する予定である。
Abstract:
近年の赤外線・電波観測技術の向上により、原始惑星系円盤の観測的研究が急激に進展している。すばる望遠鏡などの高空間分解能近赤外線撮像観測により、円盤内のギャップや渦状腕構造など、惑星形成を示唆する構造が明らかになってきた。さらに、大型ミリ波サブミリ波望遠鏡ALMAによる高空間分解能・高感度観測は、円盤内の惑星形成領域のガス・ダスト分布や化学構造を明らかにすると期待される。
本講演では、我々の太陽系から最も近傍に位置するTW Hya周りの原始惑星系円盤ガス・ダストのALMA観測の結果について話しする。最近HL Tau円盤のALMA長基線観測により、円盤内のギャップ・リング構造が明らかになったが、我々は、より年とったTW Hya円盤ダストにもギャップ・リング構造が存在することを発見した。22AUギャップの位置は、すばる望遠鏡の近赤外線撮像観測で見つかったギャップの位置と同程度であった。また2バンド長基線観測の結果、ギャップ内では大きなダストが減少していることが示唆された。ギャップが惑星により形成されたと考えると、海王星よりやや重たい質量の惑星でギャップが形成された可能性がある。一方、長基線観測により22AU以遠にもギャップを発見した。それらのギャップは惑星起源と考えるには浅く幅も狭いため、ダスト表面の氷の焼結など別の起源を考える必要がある。
また我々は、13COとC18O分子輝線の観測より、COガスがスノーラインの内側でも非常に少ないことを明らかにした。ハーシェル宇宙望遠鏡によりTW Hya円盤からはHD分子輝線が観測されているが、その結果と我々の結果を比較すると、ダスト/H2ガス比は通常の分子雲と同程度であるのに対し、CO/H2ガス比は通常の分子雲に比べ、2-3桁も減少していることが明らかになった。COスノーラインの内側でもCOガスが減少している原因としては、COがダスト表面反応により、有機分子など、より大きく蒸発しにくい分子になり、ダスト表面に留まっている可能性がある。TW Hya円盤では、最CH3OHも初検出された。CH3OHはダスト表面でCOより生成され、その一部が非熱的脱離により気相に放出されたと考えられる。
Abstract:
DESHIMA(DEep Spectroscopic HIgh-z MApper)はオンチップ型サブミリ波帯フィルターと運動インダクタンス検出器(MKID)を組み合わせた次世代分光器である. DESHIMA第一世代として326-368 GHzの帯域をカバーしたものの開発を進めており,2017年初頭のASTE望遠鏡への搭載及び試験観測を直近の目標としている. オランダのデルフト工科大学とSRONの協力関係の元,昨年(2015年)夏から本格的なDESHIMA装置の組み上げを進めてきた. 今年(2016年)に入ってデルフト工科大学における実験室の整備が進み,6月にはDESHIMAフロントエンド完成と共に,冷却光学系も含めた装置全体の評価を行うことが可能になった.今回は,DESHIMAフロントエンド完成に至る(苦労)話とその性能評価結果についてお話させて頂く.
"Optical Observations of Nonradiative Filaments in Supernova Remnants"
Abstract:
典型的な超新星残骸の可視光スペクトルは、水素のバルマー線に加え、酸素や窒素、硫黄など重元素からの禁制線を示す。これらは、衝撃波によって加熱された星間雲など密度の濃いガスが冷却する際に生じる放射と考えられている。一方、一部の超新星残骸では、重元素からの禁制線を全く示さず、水素のバルマー線が卓越する可視光スペクトルもみられる。これらは衝撃波をトレースする非常に淡いフィラメントとして観測され、その放射エネルギーが衝撃波エネルギーに比べて無視できるほど小さいため非放射性衝撃波などと呼ばれている。その放射メカニズムは、中性ガス(水素)を含む星間媒質を進む(無衝突)衝撃波を素通りした水素が、衝撃波後方で完全電離される前に、励起・電荷交換する際に放たれると考えられている。その分光解析から、衝撃波直後の陽子温度が計測できるため、無衝突衝撃波における電子加熱過程や宇宙線加速を探る貴重なプローブとして重宝されている。本談話会では、我々が実施した非放射性衝撃波の観測結果―「すばる」HDS (long slit)による空間分離・高分散分光観測および木曽 105 cm シュミット望遠鏡による固有運動測定―を中心に今後の期待も交えてお話しする。
Abstract:
To link the physical and star formation properties of structures ranging from Giant Molecular Clouds (GMCs), to Molecular Cloud Complexes (MCCs), and to Galaxies, we compare the mutual relations between their masses, mass surface densities, radii, velocity dispersions, star formation rates, and SFR densities using data from the 12CO 1-0 CfA survey and from the literature. We derive universal scaling relations for a comprehensive compilation of molecular cloud structures, spanning 8 orders of magnitudes in size and 13 orders of magnitudes in mass.The Schmidt-Kennicutt diagram is used to distinguish starburst from normal star-forming structures by applying a mass surfce density threshold of 100Msun pc^-2 and SFR surface density threshold of 1Msun yr^-1 kpc^-2. Mini-starburst complexes are MCCs that have enhanced SFR surface density, probably caused by dynamic events such as radiation pressure, colliding flows, or spiral arm gravitational instability which compress material within the MCCs. Because of the dynamical evolution, gravitational boundedness does not play a significant role in characterizing the star formation activity of MCC, especially the mini-starburst complex, which leads to the conclusion that the formation of massive stars and clusters is dynamic.