2011年度・東京大学・天文学教育研究センター・談話会

次回以降の談話会

第186回: 2011/11/24(木) 15:30-16:30

高橋 英則 氏 (東京大学・天文センター)

「近赤外分光撮像観測によるWolf-Rayet星の探索」
"Search for Wolf-Rayet stars by NIR imaging spectroscopy"

Wolf-Rayet星は大質量星故のエネルギー放射や質量放出によって、周辺の星間物質の形成や変成、
さらに次世代の星形成などに大きな影響を与える。ところで、これまでに見つかっているWR星は
銀河系の化学進化から想定される数よりも少ない。その原因の一つとして、WR星の寿命の短さや
形成される環境の観点から、その一生を星間物質に埋もれたまま過ごしている可能性が考えられる。
そこで、その素性及びどのような環境で誕生・進化するかを明らかにすることを目的として、
このような埋もれたWR星を検出すべく、近赤外分光撮像による探索を行っている。
この手法として、WR星に特徴的な近赤外線(WC型:CIV輝線(2.076um)、WN型:HeII(2.189um))
に最適化された狭帯域フィルターとKsバンドフィルターを用いる。狭帯域撮像の画像ベースで
処理することで、効率的且つ高い確度でWR星を検出することができる。これまでこの手法を用い、
減光が大きな銀河中心方向や系内大質量星形成領域、LMCなどでWR星の探索を進めてきた。
これらの領域は、1) 星形成活動度が高い、2) 広い質量範囲の星が存在する、3) ダスト形成が
盛んな環境である、などの理由から、大質量星形成に限らず、星間物質やIMFの研究に非常に
興味深い領域である。講演では、この観測手法の詳細から現在までの観測の進捗、今後の展開について述べる。

第187回: 2011/12/01(木) 15:30-16:30

松永 典之 氏 (東京大学・天文センター)

「セファイド変光星で探る銀河系中心領域の星形成史」
"Star formation history in the Galactic Nuclear Bulge revealed with Cepheid variable stars"

銀河系中心は、非常に多くの星・星間物質やブラックホール、強い磁場などが混在する複雑で
興味深い領域である。銀河系中心から200pc程度の領域(Nuclear Bulge)では数Myrの年齢を
もつ大きな星団が見つかっており、今も星形成が起 こっていると考えられている。
また、現在までの星形成が連続的であったことも 示唆されているが(Figer et al. 2004, ApJ, 601, 319)、
その結論は光度関数と の比較によるもので、間接的・暫定的である。
そこで、恒星進化理論から年齢の わかるセファイド変光星の探査を行った。
IRSF望遠鏡およびSIRIUSカメラを用い て、2001年から2008年の間にを行った近赤外線反復観測の結果、
セファイド変光 星を3個発見することに成功した。それらの周期はいずれも20日程度で、
約25Myr の年齢を持つことが分かる。今から25Myr前にNuclear Bulgeで星形成が起こって いたことを
示す初めての証拠である。一方、周期5-19日(30-70Myrの年齢に対応) のセファイド変光星は
見つからなかった。 このことは、数十MyrごとにNuclear Bulge中での星形成率が変化することを
示唆しており、銀河系中心領域での星間 物質の供給・消費などについて重要なヒントを与えるものと期待される。
参考文献:Matsunaga et al. 2011, Nature 477, 188

The region within ~200 pc of the central black hole of our Galaxy, often called the Nuclear Bulge, 
is an ideal place to study star formation activities in galaxy centres in detail. Stellar populations 
with a wide range of ages are found in this region, but the star formation history remains uncertain. 
Here we report the first discovery in the Nuclear Bulge of classical Cepheids, pulsating supergiants, 
whose ages can be derived accurately from their periods. All three of our Cepheids have pulsation 
periods near 20 days and an age of close to 25 Myr. In contrast, the absence of shorter-period 
Cepheids shows that the star formation rate was much lower between 30 and 70 Myr ago. 
This indicates that star formation in the Nuclear Bulge varies on a time scale of a few tens of Myr. 
Such detailed star formation histories have never been obtained for central parts of this or 
other galaxies. We discuss a correlation between the gas inflow and star formation around the Galactic Centre.

趣旨

東京大学・天文学教育研究センターでは2003年4月から, 院生コロキウムに引き続き, 談話会を開いています.
第一線で活躍されている研究者の方々を講師にお招きし, 最先端の研究成果をお話しいただきます.
講師の方には, 大学院生の参加者のことも考慮し, レビュー的な側面も含めた上で, ご自身の研究紹介をお願いしています.

日時

場所

タイムテーブル

13:30-14:30院生コロキウム講義室
15:30-16:30談話会講義室
16:30-お茶の時間講義室横のお茶部屋~講師の方を交えて~

世話人

予定

#日付講演者 (所属)タイトル
1862011/11/24(木)高橋 英則 氏 (東京大学・天文センター)「近赤外分光撮像観測によるWolf-Rayet星の探索」 "Search for Wolf-Rayet stars by NIR imaging spectroscopy"
1872011/12/01(木)松永 典之 氏 (東京大学・天文センター・木曽観測所)「セファイド変光星で探る銀河系中心領域の星形成史」 "Star formation history in the Galactic Nuclear Bulge revealed with Cepheid variable stars"
1882011/12/15(木)松元 亮治 氏 (千葉大学)未定
-2012/02/02(木)菅井 肇 氏 (東京大学・IPMU)未定
-2011/xx/xx(x)西澤 淳 氏 (東京大学・IPMU)未定

終了した談話会

詳細はこちら: 平成23 (2011) 年度談話会

#日付講演者 (所属)タイトル
1772011/05/19(木)田村 陽一 氏 (東京大学・天文センター)「ASTE搭載用超伝導転移端センサ型ボロメータカメラとALMA初期科学運用」
1782011/06/16(木)Michael Richmond 氏 (Rochester Institute of Technology)"Looking for eclipsing RR Lyr stars in the MACHO database"
1792011/06/30(木)田中 賢幸 氏 (東京大学・IPMU)"A new method to identify AGNs and the nature of low-luminosity AGNs"
1802011/07/07(木)橋本 哲也 氏 (国立天文台)"A hint of AGN feedback: Shock heating of ISM induced by a jet in NGC 1068"
1812011/07/21(木)柏川 伸成 氏 (国立天文台)「AKB48 vs. NMB48 vs. SKE48, そして LAE45vs.LAE54」」, "Completing the Census of Lyα Emitters at the Reionization Epoch"
1822011/07/28(木)上塚 貴史 氏 (東京大学・天文センター)Mid-infrared spectral monitoring toward AGB stars - Probing the formation of circumstellar dust -
1832011/10/06(木)眞山 聡 氏 (総研大)「すばる+ALMA及びコンピュータシミュレーションで探る連星系原始惑星系円盤」"Subaru + ALMA Observations and numerical simulations of Protoplanetary Disks in a Young Multiple star"
1842011/10/13(木)Gaston Folatelli 氏 (東京大学・IPMU)"What spectra reveal of Type Ia Supernovae"
1852011/10/17(月)Wolfgang Gieren 氏 (Universidad de Concepcion)"Improving the extragalactic distance scale with stellar distance indicators: The Araucaria Project"

過去の談話会


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