IoA Seminar 2016 / 平成28年度/2016年度・東京大学・天文学教育研究センター・談話会

Upcoming Seminars 次回以降の談話会

No. 285: June 23th, 2016 (Thu) 15:30 - 16:30

Speaker: 前澤裕之 (大阪府立大学)

Title: SPART望遠鏡の紹介と、他測器による最近の太陽系惑星観測の動向

Abstract:

近年、系外惑星の探査研究が目覚しい。初期のM-G型星の活動は活発だったという議論もあり、中心星が周囲の惑星の中層大気の物理・化学的環境、ハビタブルゾーンに与える影響について、より詳しい理解が急務となってきている。そこで、我々はまずG型星である太陽の現在の活動が地球型惑星の中層大気にどのような影響を与えているか理解を深めるべく、国立天文台野辺山宇宙電波観測所の口径10 mのミリ波望遠鏡をもちいて、太陽系惑星大気監視プロジェクト(SPART:Solar Planetary Atmosphere Research Telescope) を推進している。2011年からは金星や火星の一酸化炭素の回転遷移による100/200GHz帯吸収スペクトルのモニタリングを実施しており、談話会では、本プロジェクトの取り組みや、短・中期スケールの観測によって見えてきた太陽系地球型惑星の大気現象や太陽活動との関連について紹介する。また、最近の他波長・他測器による太陽系惑星の地上・衛星観測ミッション・将来計画などについても俯瞰する予定である。

No. 286: July 7th, 2016 (Thu) 15:30 - 16:30

Speaker: 野村英子 (東京工業大学)

Title: TW Hyaまわりの原始惑星系円盤ガス・ダストのALMA観測

Abstract:

近年の赤外線・電波観測技術の向上により、原始惑星系円盤の観測的研究が急激に進展している。すばる望遠鏡などの高空間分解能近赤外線撮像観測により、円盤内のギャップや渦状腕構造など、惑星形成を示唆する構造が明らかになってきた。さらに、大型ミリ波サブミリ波望遠鏡ALMAによる高空間分解能・高感度観測は、円盤内の惑星形成領域のガス・ダスト分布や化学構造を明らかにすると期待される。

本講演では、我々の太陽系から最も近傍に位置するTW Hya周りの原始惑星系円盤ガス・ダストのALMA観測の結果について話しする。最近HL Tau円盤のALMA長基線観測により、円盤内のギャップ・リング構造が明らかになったが、我々は、より年とったTW Hya円盤ダストにもギャップ・リング構造が存在することを発見した。22AUギャップの位置は、すばる望遠鏡の近赤外線撮像観測で見つかったギャップの位置と同程度であった。また2バンド長基線観測の結果、ギャップ内では大きなダストが減少していることが示唆された。ギャップが惑星により形成されたと考えると、海王星よりやや重たい質量の惑星でギャップが形成された可能性がある。一方、長基線観測により22AU以遠にもギャップを発見した。それらのギャップは惑星起源と考えるには浅く幅も狭いため、ダスト表面の氷の焼結など別の起源を考える必要がある。

また我々は、13COとC18O分子輝線の観測より、COガスがスノーラインの内側でも非常に少ないことを明らかにした。ハーシェル宇宙望遠鏡によりTW Hya円盤からはHD分子輝線が観測されているが、その結果と我々の結果を比較すると、ダスト/H2ガス比は通常の分子雲と同程度であるのに対し、CO/H2ガス比は通常の分子雲に比べ、2-3桁も減少していることが明らかになった。COスノーラインの内側でもCOガスが減少している原因としては、COがダスト表面反応により、有機分子など、より大きく蒸発しにくい分子になり、ダスト表面に留まっている可能性がある。TW Hya円盤では、最CH3OHも初検出された。CH3OHはダスト表面でCOより生成され、その一部が非熱的脱離により気相に放出されたと考えられる。

No. 287: July 21th, 2016 (Thu) 15:30 - 16:30

Speaker: 勝田哲 (中央大学)

Title: 超新星残骸に伴う非放射性衝撃波(Hαフィラメント)の可視光観測

"Optical Observations of Nonradiative Filaments in Supernova Remnants"

Abstract:

典型的な超新星残骸の可視光スペクトルは、水素のバルマー線に加え、酸素や窒素、硫黄など重元素からの禁制線を示す。これらは、衝撃波によって加熱された星間雲など密度の濃いガスが冷却する際に生じる放射と考えられている。一方、一部の超新星残骸では、重元素からの禁制線を全く示さず、水素のバルマー線が卓越する可視光スペクトルもみられる。これらは衝撃波をトレースする非常に淡いフィラメントとして観測され、その放射エネルギーが衝撃波エネルギーに比べて無視できるほど小さいため非放射性衝撃波などと呼ばれている。その放射メカニズムは、中性ガス(水素)を含む星間媒質を進む(無衝突)衝撃波を素通りした水素が、衝撃波後方で完全電離される前に、励起・電荷交換する際に放たれると考えられている。その分光解析から、衝撃波直後の陽子温度が計測できるため、無衝突衝撃波における電子加熱過程や宇宙線加速を探る貴重なプローブとして重宝されている。本談話会では、我々が実施した非放射性衝撃波の観測結果―「すばる」HDS (long slit)による空間分離・高分散分光観測および木曽 105 cm シュミット望遠鏡による固有運動測定―を中心に今後の期待も交えてお話しする。

趣旨

東京大学・天文学教育研究センターでは2003年4月から, 院生コロキウムに引き続き, 談話会を開いています. 第一線で活躍されている研究者の方々を講師にお招きし, 最先端の研究成果をお話しいただきます. 講師の方には, 大学院生の参加者のことも考慮し, レビュー的な側面も含めた上で, ご自身の研究紹介をお願いしています.

日時

場所

標準タイムテーブル

13:30-14:30院生コロキウム講義室
15:30-16:30談話会講義室
16:30-お茶の時間講義室横のお茶部屋~講師の方を交えて~

世話人

Schedule

#DateSpeakersTitle
2852016/6/23 (Thu) 15:30 - 16:30前澤裕之 (大阪府立大学)SPART望遠鏡の紹介と、他測器による最近の太陽系惑星観測の動向
2862016/7/7 (Thu) 15:30 - 16:30野村英子 (東京工業大学)TW Hyaまわりの原始惑星系円盤ガス・ダストのALMA観測
2872016/7/21 (Thu) 15:30 - 16:30勝田哲 (中央大学)超新星残骸に伴う非放射性衝撃波(Hαフィラメント)の可視光観測
2882016/9/8 (Thu) 15:30 - 16:30大須賀健 (国立天文台)(TBA)
2892016/9/29 (Thu) 15:30 - 16:30中村卓史 (京都大学)(TBA)

終了した談話会(2015年度)

詳細はこちら: 平成28 (2016) 年度談話会

#日付講演者 (所属)タイトル
2832016/4/14 (Thu) 15:30 - 16:30山口正輝 (東大天文センター)位置天文観測による、長周期系外惑星および星質量ブラックホールの探査
2842016/6/02 (Thu) 15:30 - 16:30下条圭美 (国立天文台)ALMAで探る太陽大気

これまでの談話会


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